鍋島家洋学資料国重文に 地元歓喜
3月18日にこんな喜ばしいニュースが流れた。これまで保存・研究に尽力してきた方々には心からの敬意と祝意をあらわしたい。
さて、この蘭学資料、現在どうなっているかというと実は目にすることができない。
せっかくの資料なのにもったいない。
実をいうと武雄市図書館・歴史資料館が改修される前には常設展示専用の「蘭学館」があって開館時間ならいつでもだれでもこの貴重な資料は目にすることができていた。改修後の今蘭学館があった場所はCD・DVDのレンタルコーナーとして生まれかわってる。
つまり、武雄市はというより市長は重文クラスの史料の展示よりCD・DVDのレンタルを選んだわけだ。そうなった経緯を振り返ると次のようになる。
市長「CD、DVDを、これはもう図書館の延長として、これは歴史的財産でありますので、これを使って、ここにいろんな人たちを呼び込むと。こういうCDとかDVDを置く分には、あの蘭学館というのは非常に適しているんですね。防音効果もある、あるいは入ったときに、ここは音楽を仮に流したにしても外には漏れないんですよね。」
との発言があることからも重文クラスの史料の展示よりCD・DVDのレンタルを選んだことがうかがい知れる。CD・DVDの中にも歴史的価値があるものがあることはわかっているが、現在のレンタルスペースにあるもの全てがはたしてそうなのか?
先見の明のある議員さんはきちんと議会で指摘をしていた。
議員「蘭学資料は日本の宝。つぶすようなことがあってはならないとの市民の切実な意見について……」
市長「条例改正と関係ないじゃないか。逸脱じゃないか」
といつものように市長は内容に具体的に反論することなく議員を罵倒した。
さらに、このときの議会では福祉文教委員長が
「(蘭学館を)そのまま残すということの市民の声はということですけれども、その分に関しては議論がされませんでした。」
「CCCの専門的な形に関しては、(略)、そういうふうな部分に関しては具体的に審議はされておりません。」
と、こちらも驚くべき発言をしている。
これらのやりとりからうかがい知れるのは、蘭学館は市民の声を反映してレンタルコーナーにされたんじゃなくて、市長と賛成議員の独断でそうされたんだということ。一体どれだけの市民がこのことを知ってるのかな。
また、改装された武雄市図書館・歴史資料館では来館者数がよく話題に上る。
これもよく考えてみると、
武雄市図書館・歴史資料館の入館者数はおよそ92万人(http://mainichi.jp/area/news/m20140402ddp012040014000c.html)、
だから後半は来館者は16%減少しているわけだ。このペースでいくとざっくり計算して早ければ3年から4年後には改修前の来館者の水準に戻ることになる。比較している以前の来館者は図書館のみの来館者だし、改装後の来館者には商業スペースのみの利用者も含まれているにも関わらずだ。
レンタルのCD・DVDは全国どこでも手に入るのに対して武雄の蘭学史料は全国に武雄にしかない。どちらが人を呼び込む力があるかは明らかなのに強引に事を進めて蘭学館を潰した人たちはこのことについてどう考えているんですかね。
それに、地域の史料は観光資源になると同時に、お祭りなどと同じく子どもの頃からそれにふれていると、一定数の人には地域のアイデンティティが芽生えてそれが一度は都会に出て行ったけど最後は地元でとか、卒業してもそのまま地元に残ったりなんかの効果もあると思うんだけどな。
今の武雄市政を見ているとあまりにも経済重視の方向に軸足をかけすぎているんじゃないかと思う、そしてそれは本当にどれほどの効果が上がっているのか。もちろん経済重視は悪いことじゃない。ただ武雄の場合は、その経済重視の姿勢に加えて耳ざわりのいい「改革」という旗印とセットになって、それがややもすれば地域の文化的・経済的・社会的基盤の破壊と直結しているように思えて仕方がない。
改革すれば全てがよくなるわけじゃないよ。